お盆休みも終わりに差し掛かっていますが、新型コロナウイルスの感染者数は相変わらずの高止まりを示しています。
そんな中、4月末にフランスのピティエ・サルペトリエール病院からの調査結果が出されました。
また、他の国々からの調査結果が出てきたこともあり、驚くような記事がプレジデントから出されました。
PRESIDENT ONLINEの記事はこちら
「タバコ喫煙者はコロナ感染から守られる」決定的証拠
詳しく内容を見ていきましょう。
目次
タバコ喫煙でコロナの感染予防ができるという仮説
コロナ感染者数と喫煙者の関係の表はPRESIDENT ONLINEからの引用です。
PRESIDENT ONLINEからの引用ここまで。
表左端に各国の喫煙者率が記載されており、新型コロナ感染者に対する喫煙者数も合わせて記載されています。
サンプルが多いほど、より正確なデータが出ると考えられるため、感染者数の最も多い集団を比較データとしてピックアップしていきます。
例えば中国では喫煙者率は27.7%ですが、新型コロナ感染者に占める喫煙者は最も感染者数の多い集団で7.0%となっています。
また同様にアメリカでは喫煙者率が13.8%に対し、最も感染者の多い集団で1.3%となっています。
ここまで差が開くと、喫煙と新型コロナの感染に関して関係性があると考えざるを得ません。
PRESIDENT ONLINEの記事の著者もこの点に言及しています。
タバコ喫煙が新型コロナの感染予防となる理由の予想
タバコ喫煙による新型コロナの感染予防となる理由として、タバコに含まれるニコチンの働きが挙げられています。
ニコチンは神経伝達におけるシナプスで作用します。
具体的には下の図において、ニコチン性アセチルコリン受容体に作用します。
詳しくは研究結果待ちですが、このニコチン性アセチルコリン受容体にニコチンが作用することで新型コロナウイルスの細胞内への流入、すなわち感染を抑えるのではないかと考えられています。
ニコチンで感染予防が出来るとしても喫煙は必要ない
ニコチンで感染予防ができるとしても、タバコを吸う必要はありません。
タバコにはニコチンの他タールなど有害物質が含まれており、副流煙などの問題もあります。
ニコチン単独が必要であれば、ニコチンパッチなどの薬があるので、そちらで対応可能となるでしょう。
喫煙によるの重症化のリスクは非喫煙者と比べて約3倍
WHOは医学誌の『The New England Journal of Medicine』において喫煙者が新型コロナウイルスに感染した場合の重症化のリスクは非喫煙者と比べて3倍となることを発表しています。
これはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のように肺機能が著しく低下していることが喫煙者に多いためです。
SARSと同様に肺への障害性が高いと考えられており、COPDを基礎疾患として持っている場合は重症化することが多いと考えられます。
ACE2という酵素が関係している様子
新型コロナウイルスの感染において、ACE2という酵素が大きく関わっていることが分かっています。
ACE2とはアンジオテンシン変換酵素2の略称です。
ACE(アンジオテンシン変換酵素)は知っていたのですが、ACE2には馴染みが無かったので調べてみました。
ACE2は細胞表面に発現する酵素であり、体の中でも特定の部位に発現します。
主に心臓、肺、腎臓、また精巣においても確認されています。
ACE2は炎症の起きた部位に多く発現するとされていて、非喫煙者に比べて、長年喫煙をしている人の肺には多数のACE2の発現が見られています。
また、糖尿病患者においてもACE2は多数発現していることが確認されています。
レニンアンジオテンシン系の簡易図は以下の通りです。
新型コロナウイルスに関係するACE2はアンジオテンシンⅡからアンジオテンシンⅠ-7という物質への変換を行っています。
アンジオテンシンⅠ-7には血管拡張や血圧低下といった作用があることが知られています。
ACE2が細胞内へ新型コロナウイルスを入れてしまう
まだ研究段階ですが、ACE2が新型コロナウイルスの細胞内への流入を助けている可能性があるようです。
細胞表面で発現したACE2の受容体に新型コロナウイルスがくっつき、細胞内へ流入、感染が成立するという流れです。
ACE2を標的に薬を作れば新型コロナウイルスに効果があるかも
ACE2の受容体に新型コロナウイルスがくっつくことで感染が成立する可能性をお話ししてきました。
これは逆に考えると、ACE2に新型コロナウイルスがくっつかないようにすれば感染の予防となるのではないかということを示唆しています。
つまり、ACE2の働きを抑える薬があれば良いのです。
近年、急性呼吸窮迫症候群に対する治療薬としてACE2と似た働きをする薬が開発されています。
この薬はヒト組み換え可用性ACE2と呼ばれ、ACE2と同様の働きをしますがヒトの細胞には結合しません。
ACE2と同様の働きをするため、新型コロナウイルスとはひっつきますが、細胞表面に発現しないため、細胞内へのウイルスの流入はしないという都合の良い働きが期待できます。