インフルエンザの新薬
ゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)
ウイルスを感染細胞表面から遊離させるノイラミニダーゼの働きを阻害するノイラミニダーゼ阻害薬(タミフルやリレンザなど)とは異なり、細胞内でのキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害することで、ウイルスが細胞内に侵入後増殖するときに使う酵素を阻害し、ウイルスのmRNAの複製段階においてその複製を阻止する。全く新しい機序の薬である。
wikipediaより引用
今までの薬とは違う、新しい効き方の薬で、症状を抑える効果が早く、ウイルスの排出期間を短縮させるという二次的な効果も期待できるとして発売が早められました。
従来の治療薬は以下の通りです。
ゾフルーザの最たる特徴として、
1回の服用で治療が完了する
これに尽きると思います。
内服薬として有名なタミフルがありますが、1日2回5日間という複数回の服用が必要となっています。
また、1回で済むイナビルですが、思いのほか手技が煩雑であり、『吸入』という使い慣れていない方にはややハードルの高い投与方法となります。これは、高齢の方や、小児が使う際にはかなり難儀しています。
このような背景の中で1回内服の製剤が発売されたため、報道機関もこぞって取り上げ、爆発的に認知されていったと思われます。
なお、このゾフルーザの発売は2018年3月14日ですが、本格的に使われだしたのは2018年10月頃からとなります。
売れすぎて、一時期は医薬品卸からの納品がストップするほどに在庫がひっ迫していたようですね。
NHKの報道
インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」を投与されたA香港型のインフルエンザ患者30人を調べたところ、70%余りに当たる22人から、この薬が効きにくい耐性ウイルスが検出されたことが国立感染症研究所の調査で分かりました。調査件数は多くないものの、専門家は現在のような使用を続けると、耐性ウイルスが広がるおそれがあるとして使用基準を見直すべきだと指摘しています。
NHK NEWS WEBより引用
A香港型インフルエンザ患者に投与した場合、耐性ウイルスは12歳以上ではおよそ11%、12歳未満の子どもではおよそ26%で検出され、耐性ウイルスが比較的、出やすい傾向があることは元々分かっていました。
しかしながら、今回の報道は70%というあまりにもかけ離れた数字が公表されています。
また、シオノギが認知していた耐性ウイルスは感染力が弱く、治療において問題となることはないと考えられていました。
しかし、NHKによるとヒトからヒトへの耐性ウイルスの感染が考えられるという報道がされています。
使い方を見直すべきか
今回の耐性ウイルスの件で、感染症学会から使用方法の制限の必要性も持ち上がっています。
確かにインフルエンザ自体、感染したところで健康な人であれば数日で回復する感染症です。
タミフルもそうですが、抗ウイルス剤は乳幼児や高齢者、呼吸器疾患など基礎疾患を持っている人の重症化の予防のために使用されることが望ましいと考えられています。
ただ、今までの薬とは異なる機序での薬であり、これからの可能性は十分に残されています。
処方する対象を厳格に定めること、また、タミフルなどとの併用も視野に入れての改定も今後は必要になってくるのではないかと考えます。
シオノギの対応に期待
今回の報道にあたっての検査サンプルはわずか30例となっています。
また患者背景が不明瞭で、耐性ウイルスのヒト-ヒト間の伝播が確定なのか不明な状態での報道となっています。
感染症学会からも使用に際しての基準の策定の提起などがあり、使用を控える方向へとシフトしそうな雰囲気が拭えない状況ですが、とりあえずはシオノギの調査結果を待ちたいところですね。