『交通事故の後から手足の痺れが気になる。けど薬が効いている感じがしない』
『リリカという薬で痛みはましになるけど、昼間の眠気が強くて飲むのが怖い』
そんな患者さんに良く会います。
新しく痛みに効く薬が販売されているので紹介します。
目次
痺れる痛みに新しい選択肢
神経障害性疼痛の薬に新しい仲間が!
現在神経性の痛みに対してはリリカ(成分名:プレガバリン)、サインバルタ(成分名:デュロキセチン)といった薬が良く使われています。
今回、タリージェ(成分名:ミロガバリンメシル酸塩)は末梢性神経障害性疼痛に対してのみ保険適用のある薬として販売が開始されました。
神経障害性疼痛とは
末梢神経や中枢神経が障害されることで起こる痛みのことです。
原因は怪我であったり、糖尿病、がん、帯状疱疹やパーキンソン病でも起こります。軽い接触であっても、激しい痛みを感じたり、その痛みが持続したりします。
末梢性神経障害性疼痛とは
国際疼痛学会では『体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛』という定義がされています。
糖尿病や、帯状疱疹や三叉神経痛による痛みもこちらに分類されます。
中枢性神経障害性疼痛とは
上記の末梢性に含まれない痛みが分類されます。
脳の機能異常によって痛みに対する感受性を上げてしまうと考えられています。
各薬剤の特徴
サインバルタ(成分名:デュロキセチン)
サインバルタはノルアドレナリンを増やし、痛みを抑制する機構が働くことで効果を発揮します。
ただし、10余年に渡るような疼痛に対しては効果が薄い印象でしょうか。
服用開始や増量の際にむかつき、眠気がしばしば見られますが、最初からこのような副作用が見られない人は増量しても問題ないことが多いです。
リリカ(成分名:プレガバリン)
神経障害性疼痛全てに対して保険適用があります。
カルシウムチャネルα2δサブユニットに対するリガンドです。
これにより、シナプスへのカルシウムの流入が抑えられ、興奮性伝達物質の放出が抑えられることで結果、痛みを抑えることができます。
尚、カルシウムチャネルα2δサブユニットには1~4型が存在しており、疼痛に関わるのは主に1型、眠気やめまいなど副作用に関わるのが2型と言われています。
リリカはこのどちらのサブユニットにも結合するために眠気やめまいが高頻度で発現すると考えられています。
リガンド(ligand; ライガンド)とは、特定の受容体(receptor; レセプター)に特異的に結合する物質のことである。
wikipediaより引用
タリージェ(成分名:ミロガバリンメシル酸塩)
リリカと同じくカルシウムチャネルα2δサブユニットに対するリガンドです。
ただし、前述の通り2019年5月現在は末梢性神経障害性疼痛にしか保険適用はありません。
リリカと違うのは、カルシウムチャネルα2δサブユニットへの親和性の違いです。
リリカはサブユニットの1型2型ともに同程度の親和性を持ちますが、タリージェは2型に対しての親和性は低下しています。
これは疼痛にはリリカと同様の鎮痛効果、かつ副作用は少ないということが期待されます。
尚、プラセボとの比較試験では1日20mgの投与では効果に差が見られなかったケースもあるようなので、最終的には1日30mgがトレンドとなってくるのかもしれません。
タリージェの使用上の注意
詳しくは添付文書を確認していただきたいのですが、併用注意にリリカとは異なる薬剤が列挙されています。
また、腎機能が低下している場合は用量の調節が必要なので、eGFRが60を下回っている場合は注意するべきでしょう。
まとめ
リリカと同一の作用機序を持っており、副作用が少ないことが期待されます。
リリカの用量調節はかなり困難であるため、タリージェで安定した効果が見込めるのであれば非常に期待できる薬かと思います。
2019年7月15日現在は新薬制限の14日までの処方となっていますが、2020年3月からは長期処方が可能となります。
販売数が伸びるのはそこからでしょうね。
追記(2020年3月9日現在)
タリージェの投与日数の制限が解除されました。
やはりリリカに比べて、少量の投与でも鎮痛効果が高いと話す患者さんが多い印象です。
また、めまいやふらつきといった副作用は出ることがありますが、頻度はリリカよりも少ないようです。