新型コロナウイルスが流行っているせいで色々と品薄になってきています。
中でも新型コロナウイルスにはアルコール消毒が有効ということで、買い求める人も多くなっているそうです。
良く目にするのはこのような商品でしょう。
成分名がエタノールである
『消毒用エタノール』という商品名ですが、消毒用アルコールの正式名称という感じでしょうか。
ドラッグストアでこんな商品を見つけたんですが、消毒に使えるでしょうか?

成分名がメタノール、工業用や燃料用の記載がある
確かに工業用の後に『アルコール』という表記がありますが、これは消毒用アルコールとは別物ですので消毒用アルコールの代用としては使えません。
商品名のすぐ下に『メタノール』という成分名が記載されていることが分かって頂けるかと思います。
この『エタノール』と『メタノール』何が違うんでしょうか。
目次
エタノールとメタノールの違い
化学式で見るエタノールとメタノール
そもそもアルコールとは炭化水素(CnHm)の水素原子がヒドロキシ基(-OH)に置き換えられたものの総称です。

化学式では以下の様に示します。
メタノール CH3-OH
エタノール C2H5-OH
つまりメタノール、エタノール共にアルコールという分類となります。

代謝経路でみるエタノールとメタノール
このように同じ酵素で代謝されていきます。
メタノールを摂取するとエタノールを摂取した時と同じように酔います。
しかし、代謝によってメタノールからはホルムアルデヒド、ギ酸が生成されるため、これらの物質により翌日以降の症状が重篤になってしまいます。
シックハウス症候群の原因物質として有名です。人体へは、濃度によって粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、喉などの炎症を引き起こす。皮膚や目などが水溶液に接触した場合は、激しい刺激を受け、炎症を生じる。ホルムアルデヒドはWHOの下部機関である国際がん研究機関によりグループ1の化学物質に指定され、発癌性があると警告されています。
出典:wikipedia
液体のギ酸溶液や蒸気は皮膚や目に対して有害である。特に目に対して回復不能な障害を与えてしまう場合がある。吸入すると肺水腫などの障害を与えることがある。ギ酸の蒸気中には一酸化炭素も含まれていることが多いため、大量のギ酸の蒸気を扱う際には注意しなければならない。慢性的な暴露により肝臓や腎臓に悪影響を及ぼすと考えられている。またアレルギー源としての可能性も考えられている。
出典:wikipedia
メタノールは飲用だけでなく、人体への使用は避けるべき物質です
世界大戦後の日本ではエタノールが非常に高価でしたが、酒を求める人が多く、密造酒としてメタノールを含んだ酒が出回っていたようです。
メタノールを飲むと、とりあえずは酔えますが、その後ホルムアルデヒド、ギ酸によって中毒症状を引きおこします。
この中毒症状として有名なのが中毒性視神経症、いわゆる失明に繋がります。
メタノールの解毒方法
あってはなりませんが、もしメタノールを誤って摂取した場合の解毒方法は以下の通りです。
1、血液透析
血液透析を行い、メタノールそのものを除去します。
2、エタノールの投与
アルコール脱水素酵素が分解を行う優先順位はエタノール>メタノールのため、エタノールを投与することで、メタノールからホルムアルデヒドへの代謝を遅らせることができます。
3、葉酸の投与
ギ酸を分解する際に葉酸を必要とします。葉酸を投与することでギ酸の分解を促し、体内から排泄されやすくします。
家庭で応急的に行えるのは2、エタノールの投与でしょう。
ただし、アルコールの過剰摂取による急性アルコール中毒も注意が必要です。
メタノール摂取から中毒症状の発現までは時間差を生じます。
疑わしい場合は早めに医療機関を受診してください。
調剤薬局での消毒用エタノールの使い道
調剤薬局での使い道は色々あります。
主には消毒として使うことが多いですが、止痒水や、塩化アルミニウム水などを作る際にも使用します。
塩化アルミニウム水は多汗症の治療のために自費で処方されます。
消毒用エタノールは水分を含むため、場合によっては無水エタノールを用いる場合もあります。
消毒用エタノール製品の種類
消毒用エタノールには『消毒用エタノールIP』という製品も販売されています。
IPとはイソプロパノールの略号で、消毒用のエタノール76.9~81.4%以外にイソプロパノールを添加物として含みます。
消毒効果は両者ともに違いはありませんが、イソプロパノールは2級アルコールに分類されるため、『消毒用エタノールIP』は酒税の対象となりません。そのため、通常の消毒用エタノールに比べて安価で提供できるというメリットがあります。