新型コロナウイルスへの対策として国に備蓄されている『アビガン』の使用が視野に入ってきました。
新型インフルエンザの治療薬として切り札的な存在ですが、従来の抗インフルエンザ治療薬との違いはどこにあるのでしょうか。
アビガン錠200mg(成分名:ファビピラビル)とは
効能又は効果
出典:添付文書
新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)
効能又は効果に関連する使用上の注意
1.
本剤は、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品である。本剤の使用に際しては、国が示す当該インフルエンザウイルスへの対策の情報を含め、最新の情報を随時参照し、適切な患者に対して使用すること。
このように既存の抗インフルエンザ治療薬が使えない場合のみ国から許可されて初めて使えます。
また、エボラ出血熱にも効果がある可能性があり、今後の適用拡大に期待されています。
尚、保険での使用を前提にしていないためアビガン錠200mgには薬価が設定されていません。
アビガン処方の際の注意
催奇形性が疑われるため妊婦、妊娠の可能性のある女性には投与できません。
投与から7日以内の性交渉は避妊をする必要があります。
また、授乳中も使用不可です。
これらの内容に関して説明を受け、同意書にサインをして初めて使用することができます。
アビガンの作用機序は
従来のタミフル(成分名:オセルタミビル)、イナビル(成分名:ラニナミビル)といったノイラミニダーゼ阻害剤は増殖されたウイルスを細胞から放出(リリース)しないようにする薬でした。
アビガン(成分名:ファビピラビル)はmRNA(メッセンジャーRNA)の伸長やゲノムRNAの複製の際に働くポリメラーゼという酵素を阻害することで作用します。
簡単に言うと、インフルエンザウイルスが細胞内で増殖するのを抑える働きがあります。
もしかしてゾフルーザも期待できそう?
アビガンはゲノムRNAまで影響を及ぼす故に、同意書まで必要な薬剤となっています。
ただ、ゾフルーザ(成分名:バロキサビル)の作用機序を見てみるとCapエンドヌクレアーゼ阻害のみであり、アビガンに比べ投与に際しては制限のない安全な薬剤だと考えられます。
使用する場合、ゾフルーザは耐性ウイルスの発現の疑いがあるため、タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害剤との併用が望ましいかもしれません。