薬剤師のチラシ裏

経鼻の栄養チューブ。熱で収縮する材質も。材質が変わると黒いものが見えてきた。

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今回は実際の業務向けのお話です。

 

チューブを変えてから色が変わってきた

経鼻チューブを使っている患者さんの家族から以下の訴えがありました。

 

「柔らかいチューブに変えてから、使用後数日経つと黒っぽくなってくる。前のチューブではこんなことは無かった」

 

この患者さんは以前までPVC(ポリ塩化ビニル)製、DEHP(フタル酸エステル)フリーのチューブを使用されていました。

しかし、チューブの硬化が早いとのことでPU(ポリウレタン)製のチューブへ変更されています。

栄養チューブは主にPVC(ポリ塩化ビニル)製とPU(ポリウレタン)製の2種類が存在します。

PVC製は熱や薬品に強いですが、硬いため可塑剤と呼ばれる柔らかくするための物質を添加されます。可塑剤としてDEHP(フタル酸エステル)が使われていることがありますが、DEHPは使用により溶出するため体への影響も不安視されており使用を控えているメーカーが多いです。

PU製は柔らかく柔軟性があります。しかし、やや温度変化や化学変化に弱く、PVCと比べると劣化しやすいと考えられています。


服用中の薬の配合変化を疑う

黒色への変化ということで、先ず服用中のインクレミンシロップの関与を疑いました。

しかし、インクレミンシロップと配合変化を起こす組み合わせは見当たりません。

そこで患者さんの家族へ投与の手順をすべて確認すると、薬剤投与の最後にお茶で流していることが分かりました。

使っていたのはノニ茶、日本茶と同等のタンニンを含むお茶のため、黒色変はおそらくインクレミンシロップとノニ茶によるものと推測されました。

突然出てきた黒色変

再度患者さんの家族へ確認したところ、チューブ変更以前からノニ茶は使用しており、チューブの黒色変は変更後からということは間違いありませんでした。

このことから、チューブの黒色変はチューブの変更が原因と考えられます。

製造元へ問い合わせたところ、PVC製とPU製では内腔の滑らかさに微妙な違いがあるとの回答を得ました。

結論

推測の域を出ないのですが、チューブを変える前からインクレミンシロップとノニ茶の配合変化は起こっていたようです。しかし、PVC製のチューブが滑らかで黒色変が付着せずそのまま流れて行ってしまったようです。

逆にPU製のチューブへ変更することでザラツキに黒色変が付着し、チューブ全体の変色が発見されたと考えられます。

まとめ

ノニ茶を使用されていることもそうですが、チューブの材質に違いによって認められる配合変化が異なるケースです。

非常にレアな事例ですが、今後に役立てたいと思います。