薬剤師のチラシ裏

薬局にも病院にも咳止めがないのでハチミツで代用できる?毎日毎日蜂蜜舐めてるとプーさんになった気分だわ

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咳止めがありません

咳止めがありません。

筆者の勤めている薬局でもそうですが、咳止めが入ってきません。

特に錠剤。

1か月トータルで3000錠くらい使っていたと思いますが、月に300錠くらい入ってくる感じです。

ドラッグストアには『メジコンPro』なる商品が陳列されていますが、医療用のメジコン錠15mgと同じものです。価格はお察しですが、1錠あたり60円ほどです。医療用だと1錠6円しないとか、価格設定がバグってるとしか思えないというのはここだけの話です。

メジコンの代わりは?代替薬を考えてみる。

アスベリン、アストミン、コルドリン、ペントシキベリン、フスコデ、リンコデ、フスタゾール…

いや、どれも入荷しないですね。

漢方薬を検討するものの、麦門冬湯と麻杏甘石湯は出荷停止しているし、小青竜湯はコロナ後の咳に効くんだか分からないし。

粉薬を考えてみましたが、小児科受けていると需要が重なってしまってすぐに在庫が消し飛んでしまうんですよね。

コデインリン酸であれば12歳未満には出せないので、大人用として在庫しておけます。が、やっぱり入荷しづらい。

シロップに関しても同様です。

原点回帰というのでしょうか、ハチミツでも良い気がしてきました。

咳止めとしての蜂蜜について、最近の研究で興味深い結果が報告されています。

オックスフォード大学の研究チームは、ハチミツが風邪の症状に及ぼす影響を検証した14の研究を分析し、ハチミツが市販薬や抗生物質よりも風邪の治療に効果的であるという論文を発表しました 。この論文では、ハチミツは喉の痛み、鼻づまり、せき、うっ血といった風邪 (上気道炎)の症状を改善する上で、市販薬や抗生物質といった通常の治療法よりも有効であると結論づけています。また、ハチミツは安価でアクセスしやすく、体に及ぶ害も限定的であるため、抗生物質による悪影響を防ぐことができると指摘しています。

イスラエルのテルアビブ大学でも、ハチミツが咳に効果があるかどうかを調べた研究が行われました。この研究では、1歳~5歳までの上気道炎による咳がでている小児患者さんを対象に、ユーカリハチミツグループ(eucalyputus honey)、シソ科ハチミツグループ(labiatae honey)、シトラスハチミツグループ(citrus honey)、ナツメヤシエキスグループに分けています。前の研究と同じように1日目は何もせず1晩過ごし、翌日の寝る30分前にそれぞれに決められたハチミツかナツメヤシエキスを10g摂取してもらいました。その結果、3つのハチミツグループでは全てナツメヤシエキスグループより咳の頻度の改善が認められました

これらの研究から、咳止めとしての蜂蜜には一定の根拠があることがわかります。しかし、これらの研究はまだ限定的なものであり、さらなる調査が必要です。また、アレルギー反応や食中毒などのリスクも考慮する必要があります。特に1歳未満の乳児には絶対に与えないでください。咳止めとしての蜂蜜はあくまでも補助的なものであり、重度の咳や長引く咳は医師に相談することが大切です。

ハチミツに含まれるボツリヌス菌について

ボツリヌス菌とは、土壌や水などに広く分布している細菌の一種です。この菌は芽胞という硬い殻に包まれており、酸素のない環境で発芽して毒素を生成します。この毒素は神経系に作用して筋肉の麻痺や呼吸困難などを引き起こす危険な物質です。

ハチミツには、花の蜜に混入したボツリヌス菌の芽胞が含まれる可能性があります。しかし、健康な成人や1歳以上の子どもは、腸内細菌や免疫力によってボツリヌス菌の増殖を防ぐことができます。そのため、通常はハチミツを食べても問題ありません。

しかし、1歳未満の乳児は、腸内細菌や免疫力が未発達であるため、ハチミツに含まれるボツリヌス菌の芽胞が腸内で発芽して毒素を作り出す可能性があります。これが乳児ボツリヌス症と呼ばれる病気で、便秘や嘔吐、無表情や嚥下障害などの症状が現れます。重症化すると呼吸停止や死亡に至ることもあります。

乳児ボツリヌス症は早期に治療すれば回復する可能性が高いですが、予防することが最も重要です。そのため、1歳未満の乳児には絶対にハチミツを与えないでください。また、授乳中の母親がハチミツを食べても乳児に影響はありませんが、母乳以外の食品や飲み物を与える際には注意してください。