薬剤師のチラシ裏

RSウイルスの重症化を予防するシナジス。高額な薬価にどうやって対応する?

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RSウイルスとは

いわゆる風邪の原因とされるウイルスの1種です。

潜伏期間は2~5日程度、症状としては鼻水や咽頭痛、その後に咳や発熱が見られることもあります。

インフルエンザウイルスと同様にA型、B型が存在しており、A型の方が重症化しやすいと言われています。

RSウイルスの感染様式

飛沫感染と接触感染のどちらも可能性があります。
そのため、学校や保育園など集団生活や、家庭内での感染が大半を占めると考えられています。

RSウイルスの抗体獲得は

母親からは抗体を得ることができません。

1歳までに50~70%以上の新生児が感染し、3歳までにほぼ全ての子どもが抗体を獲得するとされています。

抗体を獲得した後も感染はしますが、その場合は軽い風邪の症状のみで終了します。

抗体を獲得するまでが重症化しやすい

1歳までに感染した新生児の約3分の1が下気道疾患を起こすことが報告されており、心疾患や呼吸器系の疾患を基礎疾患として持っている場合は重症化しやすいです。

そのため、ほぼすべての小児が抗体を獲得するとされる3歳までの期間に使える『シナジス』という注射があります。

シナジスとは

出典:アッヴィ合同会社HP

成分名を「パリビズマブ」といいます。

予防接種と混同されることが多いですが、予防接種が抗体産生を促すためであるのに対し、シナジスはRSウイルスに対する抗体を直接体内に入れるものです。

そのため効果が継続するのは1か月であり、効果を継続させるには1か月に1回の接種を繰り返すことになります。

シナジスが保険適用となるのは

シナジスが健康保険の適用となる対象は厳格に定められています。

効能又は効果

下記の新生児,乳児および幼児におけるRSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)感染による重篤な下気道疾患の発症抑制
RSウイルス感染流行初期において

・在胎期間28週以下の早産で,12ヵ月齢以下の新生児および乳児
・在胎期間29週〜35週の早産で,6ヵ月齢以下の新生児および乳児
・過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児,乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児,乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児,乳児および幼児
・24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児,乳児および幼児

出典:シナジス筋注用添付文書

この中でも条件として重要なのが

RSウイルス感染流行初期において

という文言です。

例年、10月頃から流行する傾向があり、そこから4~6カ月程度の期間継続します。

そのため、仮に10月でちょうど2歳であっても条件に合致していればそのシーズン内はすべて保険の適用となります。

シナジスの自己負担金

シナジスの投与量は体重1kg当たり15mgとなっています。

例えば体重5kgの場合は

15mg×5=75mg

となり、100mg製剤を使用しますので薬価のみで121,257円となり、この場合の自己負担は2割で約24,000円となります。

また体重10kgの場合は

15mg×10=150mg

となり、100mg製剤と50mg製剤を使用しますので薬価のみで182,772円となり、自己負担は2割で約36,000円となります。

医療機関における保険請求は

患者側にはあまり関係の無い話ですが、シナジスを小児科外来診療料に含めて請求すると恐ろしい赤字が発生します。

出来高での請求と、残液を廃棄した旨は必ず記載するようにしましょう。

高額医療費の申請を検討しても良いでしょう

病院や薬局など医療機関窓口での支払金額を抑えることのできる制度です。

利用しなくても確定申告で払い戻しを受けることも可能ですが、払い戻しを受けるまでの持ち出しが最小限で済みます。
煩雑な手続きの必要が無いため、予め申請しておいても良いかもしれません。

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